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共同生活のススメ。

 

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 共同生活は最高だ。ベランダの物干し竿に住人が各々バスタオルを干す。カリカリに干し上がったバスタオルは、いつまでも部屋内に持ち込まれることが無い。風呂に入る直前、「あーやべえ 外じゃん」と言いながら渋々ベランダへ出る。もちろんTシャツに下着のだらけた恰好で。室外機の上のタバコを見て、ああそういえばと思いながら1本取り出し火をつける。向こう5分ないし10分は入浴が延期された。

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 ベランダへの窓は、同居人の部屋に取り付けられている。そこを毎度いちいち通過。畳の匂いと消臭スプレーの匂いが混ざった和室には、よく分からないスケートブランドの服たちが散らばっている。ごちゃごちゃと物々が乱雑していて、それでもやはり好みは一貫していて目を楽しませる。脱ぎ捨てられた靴下はギルダン。レッドキャップのパックTシャツは封を切られないまま。ジャリジャリの壁に立て掛けられたシンセサイザースケートボード

 もう一人の同居人の部屋を通ることもしばしばある。彼も彼で面白い人だ。さっきの彼と同様、部屋は散らかっている。読みかけのPOPEYEや漫画の数々。引っ越してきた日から全く変わらないダンボールの山脈。本をよく読む彼の口癖は『本棚買わないとなぁ』で、休日になればそれをいつも言う。『素材が違うんだよ』とか、『イケアのアレじゃ多分耐えきれず歪んじゃうよ』とか、様々な言い訳じみた言葉が彼のダンボール山脈をそのままの形に保っている。

 僕の部屋はといえば、別に自分を良く表したい訳ではないが、綺麗だと思う。キャリーケースとボストンバッグだけを持って上京したような僕の部屋には、とにかく物が無さすぎるからだ。こっちに来てからも、別に物を増やす必要性を感じなく。ハンガーとハンガーラックは新調したが、それ以上物を増やす理由が見つからない。机と椅子が無いのはちょっと考えものだけど。

 

 大きな山々を横目に見つつ彼の部屋を通り抜けて、自分の部屋の下着と靴下を手に持ち風呂場へ。洗面台の上に置かれたスタイリング剤は、2週間前に戸棚みたいなところへ押し込まれたはずだ。またも点々散らばっているのは、誰かの「利便性と効率性」の言い訳のせい。めんどくせえもんな。毎度かかんで取り出すの。

 明後日明々後日、ひいては来年の方まで向いているんじゃないかと思うほどやる気が無い、シャワーヘッドの穴。シャンプー・ボディソープは詰め替え用をそのまま使う。詰め替え用の件に関しては、さすがにどうにかしようという話になった。それでも、今ですら変わっていない。

 

 風呂から上がって、バスタオルを持ってくるのを忘れていた事に気が付く。僕はどうやっても馬鹿な人だ。何のためにベランダへ出たのか。「あーどうしよう困った」と言いながら、犬みたいにぶるぶる身体を震わせ水をあらかた落とした後、さっきまで着ていたTシャツで下半身を隠しながらまたもベランダへ出る。逮捕はごめんだ。真っ裸で逮捕されるなんて、もってのほか。

 ここで同居人に声を掛ければ良いはずなのだが、彼らは各々好き好きに出かけてしまっている。一人はびわ狩りに行った。もう一人は蚤の市へ。僕は裸で立ち往生。控えめに言っても、僕がただ一人馬鹿だ。

 警察経由の大事も無く、バスタオルを手に入れ身体を拭いた。23歳が素っ裸で何をやっているのか、と自省しつつ。カリカリのバスタオルの接触第一印象、チクチクと立ち上がった繊維?が僕のぼけた態度を非難しているようで、少しイライラした。

 

 遠くの方でガタンと音が鳴り、2人の内どちらかが帰ってきた。びわ狩りの方だった。どこと無く日焼けしたような感じで、羨ましく思った。僕は家で一人、無意味にバタバタしていたというのに。二人でまたベランダに出て、1本ずつ喫煙し、各々が部屋に戻る。別にこれと言って特別「ここが共同生活の良いところ!」と言えるものは無いのだが、やっぱり楽しいなぁと思う。なんかわかんないけど、共同生活は最高だ。なんかわかんないけど。