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ギブ中心の人に出会った話。

https://www.instagram.com/p/BE7lqu3TKF1/

 暑いからと言ってテキトーにまくし上げたディッキーズの太いパンツ。脱いでS字フックに掛ける時も、その裾を直すことは無く。「ロールアップ」なんていう格好の良い言い方はできない程、至極雑把に2回ほど折り返した。「人柄ありきのファッションは楽しい」と言い訳じみた言葉にしがみつきながら、自らの怠惰をなるべく優しめに肯定する。

 このパンツは、僕の友達のマークという奴がくれた一本。あんまり、「奴」とかは言いたくないけど、「友達の」に続けるにはそれしか無い。明るいベージュ色のこのパンツは、彼が『新しく買ったんだけど、入らなくてさ』と言いプレゼントしてくれた物だ。身長は180cmオーバー。体重はと言えば、恥ずかしいだろうからある程度考慮した表現になるが、60gの板チョコが1500枚分くらい。1800枚分くらい?ここで電卓を用意するような読者を大切にしたいが、これは今回の話とはあまり関係が無い。

 ガタイの良い彼は、体型よろしく太っ腹だ。小馬鹿にしているわけではない。失礼が過ぎるか。本当に気前の良い人で、僕はそういう人になりたいと常日頃思ってきた。東京に出てきて1週間くらいが経った頃に、僕に酒をご馳走してくれた彼。薄暗いバーにて、飲み比べできるウイスキーのストレートのセット。スモーキーな味わいの物から、スッと飲めるくらいライトな飲み口の物まで。3つの小さなグラスたちを、東京新米の僕に。

 その時に彼が被っていたニューエラのハットも、僕にくれた。たしか彼は、僕に会うからと言ってその日に新調したとか言っていたはずだ。パイル生地のもさもさしたハット。『サイズが合わないから』と言いながら、はにかみつつほとんど新品のそれを僕に手渡した。純粋に格好良いと思った。


 新しく買った物を、そっくりそのまま人にあげてしまうこと。僕にはあまり無いセンスだ。僕が誰かに物をあげるとしても、ずっと使って愛着を湧かせた物であったり、もしくは構えて「プレゼントしよう」として買った物であったり。

 自分と全く違う人間を好きになるというのはよくあることで、 その文脈で言えば、僕は彼のことが大好きだ。『僕について書いてみてよ』と言われてこの文章を書いていることは考慮の内に含めなくとも。

 だって、そんな人いないよ。自然にプレゼントできる人。自分が欲しくて買った物を、サイズが合わないとかいう理由でスッと渡してしまえる人。ディッキーズに関しては僕にとってはとても太くて、ベルトをギュッと締めなくては穿けない物だけれど、「それはそれとして」という言葉を幾度と無く口にする僕には最高だ。なんでもいい。穿くことさえできれば。そういうのを理解した上でプレゼントしてくれたのなら、彼は最高だと思う。

 同居人が僕に言った、『三浦の人とのつながりは本当に凄いな』や、同じく心から大好きな「はせさん」が言った『愛する人は愛されるんだなぁ』などを、今になってじっくり見つめてみる。深く吸い込んでみる。僕みたいな小童と仲良くしてくださる人々は、本当に愛に満ちた方々なのだと実感する。嬉しい限りだ。

 今日も、彼がくれたディッキーズを穿いてスケート。周りの人々に生かされているという感覚を実感しながら、パリッと決まったパンツを穿いて滑ってきます。本当にありがとう。これからもよろしくね。