手ぶらでいいじゃないか。

 

 ワイドパンツを買って、ほぼ毎日穿いている。黒のポリエステルで出来た一本。シャリシャリとした肌触りがやけに心地よく、色も黒だというもんだから、何にでもきっと合う。怠惰な性格をこれでもかと助長する。のびのびやらせてもらっている。しかも、北海道では考えられないほど暖かい気温のおかげで、Tシャツを1枚でぺろっと着ていられるからなお良い。「アンダーウェア」として叩き売りにされていた5枚組のTシャツを、「乳首が透けるから」という理由で2枚重ねて着た。「1枚でぺろっと」ではなかった。

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 ポリ縮のシワが何とも自分の人となりを表しているようで愛着が湧く。ファッションは勿論心から大好きだけど、コッテコテに派手な格好をしたいという訳でもない。そんなものに対する興味は無い。大量生産の服で個性を出そうなんて無理だ。一週間が7日間で構成されていて、そのうちの1日だったら被らないから…なんて。可能性に賭ければどっかで上から下まで全く同じ格好をした人間に会うことだってあるかもしれないし。別に何でもいいけど。

 

 バッグは極力できることなら持たないようにしている。この日もそうだ。同期の人達からこっぴどく馬鹿にされたあげく、反抗的なパンクの精神を以って、400円の雑な作りのメッセンジャーバッグを買ったのは先週のことだ。あれは今では部屋の端っこでくたびれ寝っ転がっている。たしかPOPEYEが二冊入っていたような気がする。一度持ち出して、背中と肩の煩わしさから二度と持たないようにした。

 小銭をポケットに突っ込んでジャラジャラ言わせているのはちょっと恥ずかしいから、可能なら500円玉をせめて2枚くらい持ちたいなとは思っている。それでもカチカチ鳴るだろうから、1000円玉が早く出てきてくれないかと思う。

 携帯も安タバコも100円ライターもいくらかの小銭も、大した読み進めていない文庫本もテキトーなボールペンも、全部太もものポケットに収まってしまう。だったらもう、手ぶらでいいじゃないか。太ももがパンパンになるのはごめんだから、持ち物はできるだけ少なく。「余計なことを考えない、ミニマルな暮らしを」なんていうきっかけ・動機じゃない。

 昔読んだファッション誌の中のストリートスナップに、「バッグの中身特集」みたいなのがあった。ヘアワックス、デジタルカメラ、コーム、手帳にサングラス。わかる。チョコレート、コカコーラ、すごくわかる。リンゴが一玉、英字新聞に包まれたマスカットが一房。(そんなもん入ってる訳ねえだろ)と思った。人のライフスタイルにウダウダ言いたくはないが、これは絶対に嘘とかヤラセだ、と思った。反抗期が相乗し、あれから僕は「ストリートスナップ」というのを微塵も信じられなくなった。だって絶対ガムのゴミとか入ってるはずでしょ!そういうもんでしょ!バッグって!

 

 だったらもう、僕はずっと手ぶらでいい。いいじゃないか。カフェで席を2つ使わなくて済むよ。忘れ物もきっと無いよ。別に、他の人はそれとしていいんだけど。

 久々に文章を書いたら、嫌味なおじいさんみたいになった。ねじ曲がってしまった性格をどうにかしなくちゃいけないなぁとは思っている。思ってはいるんだけど。