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汚い居酒屋が好きで。

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 きったない居酒屋が好きでたまらない。狭いテーブルに置かれたバキバキの色味のメニュー。コショウと一味の残りは少なくて、何ならフタが壊れているくらいで。灰皿を見れば、いつかの100円ショップにいくつも重ねられていたような銀色のカンカン。椅子は足の長さがそれぞれ合っていない古ぼけた木製。ダメだ、ビールが飲みたくなってきた。

 当事者として「昭和酒場」みたいなのを経験したわけではないけれど、だからこそ僕が言う「レトロ」なんていう言葉にはよっぽど重みや深みが無いのだけど、僕は心からそういう居酒屋が好きだ。小洒落て綺麗なバーなんかよりも、そういう汚い居酒屋の方がずっと好きだ。

 何年選手か分からないようなよれよれのスーツを着た2人が仕事の愚痴をウダウダ言う。向こうのおばさんが灰皿いっぱいに溜まったしわくちゃの吸い殻を器用にずらしながらタバコを消す。パチンコで4万円負けた話を延々しているおっさんの頭はやけに寂しくなっていて、猫背に丸めた背中もまた同じく寂しそうだ。

 オシャレ、ファッショナブル、小綺麗。キザな音楽、トイレに貼られた誰だかよく分からない人間のポスター。そんなもん要らねえ。紫煙で充満した場末の寂れた光景と、冷えてもいないビールジョッキが心地良い。これは言いすぎた。ビールジョッキは冷えていた方が良いな。


 たしかに「丁寧な生活」は格好良いか。コンクリート打ちっ放しの家に住む人は皆オシャレか。『起きたらすぐに常温の水を飲むんです』と言った女優はファッショナブルでスタイリッシュか。でも、そんなのを毎日毎日続けていたらきっと、3週間経ったくらいのタイミングで疲れちゃうよ。少なくとも僕には絶対できない。「それはそれとして」という絶大の武器がある僕には、別にその生活でも良いと思うんだけど。

 言ってしまえばシャンプーなんて詰め替え用でいいし、起き抜けに飲む冷たい水道水も問題無く美味しい。何かの良さを語る際に、それと真逆の物を提示することで良さを引き立たせるようなことはしたくなかったけれど、たしかに分かりやすいよ。僕なんかに丁寧な暮らしなんかできやしない。オシャレなバーはいつもこそばゆい。東京の水道水も飲めるじゃないか。スーパーで水を買うなんてしたくないよ。


 自分にとって身近で、親近で、見える範囲の生活をしたい。「お金が無いから」とかそういうのではなく。身の丈に合った生活みたいなのを続けていきたい。いつまでも古ぼけた居酒屋の酸っぱいレモンサワーを飲んでいたい。薄っぺらのハムカツと、煮込まれすぎてくたくたになったモツに一味をどっさりかけたのを食べていたい。かく言う僕は今、非常に気恥ずかしい思いとともにドトールコーヒーでベイクドチーズタルトを頬張っている。言動の不一致と、有言不実行の怠惰な性格がモロだ。