僕、パンクロックが好きだ。


 好きなものについて延々語っている人の姿を、ずーっと見ていたい。汗をかきそうなくらいせわしなく動く両手をひたすら見ていたい。ヒップホップが好きな友達が持つ音楽愛も、モードファッションが好きな人のその理由も、深爪の部分を押すのが好きなあの子の気持ち悪い性癖も、ラーメンばっかり食べてるあいつの好きなお店についても。人が100人居れば、100通りの「好きなもの」があるはずだ。その全部を聞いてみたい。語るときの目の真っ直ぐさを、ざわざわ動くうるさい手を見ていたい。

 上手な言葉は不要だ。巧みに構成された物語も全く必要ない。荒削りで、彼や彼女がそのまま思った通りのを受け取ってみたい。ゴッツゴツに角ばった岩みたいな裸のこだわりを聞いていたい。喉の奥から出てきてすぐ、生まれたてのヌルヌルなこだわりに触れてみたい。

 『ギターの弦はこれじゃなきゃダメなんだよ!』とか、『白いTシャツには黒いスキニーだろ!』とか。絶対楽しいんだ。強い意見というものは、『これも良いけどこっちの弦の方がなんとなく良いんだよねえ』じゃない。『いや、もちろんデニムも合うよ でも黒いスキニーの方がなんか…』じゃない。強い偏見には気持ちが乗っているはずだから。「~じゃなきゃ絶対ダメ」という強い偏見は、良く言い換えれば「こだわり」だ。最近の僕はこればかり言っている。

 思えば僕の周りは面白い人で溢れていた。B級映画ばっかり観ては『アレはおもしれえ』と常に言っている奴とか、パンクのファッションからアメカジファッションに移り、最終的にスケートの服装を本当に楽しそうにしている彼とか。僕と全く同じような事を考えているせいでLINEのやりとりがほとんど被ってしまう人や、毎晩酒ばっかり飲んでいつも泥酔してる人もいる。見た目は本当に格好良いのに全然モテなくてアニメに走ったアイツなんかは特に最高だ。

 そういう人たち全員のこだわりを聞きに聞いて、自分に少し影響してくる部分を大事にしたい。影響されなくてもいっそのこと良い。「こんな奴がいるのかぁ」「こんな事考えて生きてるんだなぁ」と思いながら、自分とは違うなぁと思いながら、その人のまっすぐな眼差しを全身で受け止めたい。

 人の話を聞くのは好きだ。それが彼や彼女が持つこだわりについてなら、なお好きだ。何時間だって聞いていられると思う。飽きるまで話して、満足した時に止めていい。全部しっかり聞くから、全部しっかり話してほしい。僕のは別に真剣に聞かなくてもいいから。どうせ上手いこと言おうとして失敗してるだけなんだから。僕なんて。

パンク・ロック

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