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冬は人を暖かくするのかもしれない。

 

 今日は大雪。東京ではいくつもの電車が止まったらしい。Twitterのタイムラインには困惑した人々が一堂につぶやいていた。ニュースを見れば『6cmの積雪』とアナウンサーが眉の尻を下げながら申し訳なさそうな顔で言った。窓から外を見て、真っ白な札幌の寒空を確認して、ちょっとにやけた。「甘えんな」とまではもちろんいかないが、ニュアンスは少しそれに寄った感情を持った。環境が違うからそんなことは言えないけど。

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 そんな意地悪なメンタルで、車のエンジンをかけようと鍵を半回転させた。車が「キュルキュルキュル~」と音を上げ、しまいには「カタッ....カタッ.....」と鳴らしながら動かなくなった。因果応報。東京を微塵にバカにしたのが悪かった。すみませんでした。

 困りに困り果てた僕は、自動車保険の会社に電話をかける。「バッテリーが上がっちゃったらしくて...」と。対応してくれたお兄さんのお話がくどくどと長い。助けてもらう立場が何を言うかという話だけど、ちょっとそこまで長くアレコレ言うかなあと思った。仕方は無いけど。電話が終わって、結局のところ業者が到着する時間は未定だというオチがついた。今日はツイていない。

 泣きそうな顔で周りを見渡すと、ゴミ捨て場のところにて車を背にしたおじさんが一人。彼に話してみようと、一本の藁にもすがるような気分で近づいた。

 

「すいません、おはようございます。あの、ちょっと、車のバッテリーが上がっちゃって。ジャンピングのコードとか持ってたりしませんかね?」

『おはよう。持ってるよ!軽かい?だったら直せるよ~』

「ほんとですか!助けてもらってもいいですかね...」

『いいよー 困ったときはお互い様だしなあ』

 

 雪国にも良いところはあるのだと思った。途端に自動車保険の会社にキャンセルの電話をし、さっきの手配を無かったことにしてもらった。『鍵、回してみな~』と優しい口調のおじさん。エンジンが無事かかったのち、彼の手が赤くなっているのを確認した。

 「何かお飲み物でも」と言う僕に対して、『そんな!いいって!困ったときはお互い様なんだから!』とニコニコする顔を見た。大雪と極寒は人の暖かさを強調する。こんなにもあったかい人が居たのか、と思いながら彼が見えなくなるまで頭を下げた。

 また会いたいと思う人が増えた。死んでほしくないと思える人がまた一人増えた。ひたすら嬉しかった。将来の僕がこんなおじさんになれていたら最高だなとも思った。寒さを吹き飛ばしてくれる人の暖かさ。夏が好きな僕は、対比した冬を憎むほどに嫌っていたが、今回のこの一件によって冬がとても好きになった。ありがとう、おじさん。今日は良い日だ。