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寒いの嫌だ。

 

 雪が降っている。薄暗い風景の上、斜めに滑り落ちるように線を書く白いそれらと、カレンダーの上、いくつかの赤い数字を交互に確認して、(もう1年も終わっちゃうんだなあ)と思った。コンビニに入ればホット飲料を選ぶ以外の選択肢は無くなってしまったし、アウターのポケットの中にはいつも両手が突っ込まれる。歩道の上の凍った部分を、ペンギンみたいによちよち歩く人も増えた。スニーカーを履いている人はほとんどいなくなってしまって、冬を目前に購入したナイキのスニーカーも玄関でじっとしている。たまに履いてみれば、メッシュの部分から冷ややかな風が足に向けて吹き込んできて、やはり、冬の北海道にてスニーカーを履いて歩くのは苦行以外の何でもないと気づかされる。

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 バイト先の電気を点けるタイミングも、めっぽう早くなった。玄関近くに置いた乾燥機、そこから取り出した生乾きの洗濯物からはうっすらと湯気が出ていた。できることならシャワーも浴びたくない。上がった時に身体から浮き出ている、洗濯物のそれよりももっと濃い色の湯気が切ないからだ。友達から譲り受けたであろう少しの鼻風邪も辛い。冬は切なくて辛くて厳しい。なんとか楽しもうとはしたものの、やっぱり厳しい。

 何でもかんでも楽しもうとする態度は大切で、インターネットを介してネガティブなことはあまり言いたくないとも思う。どうせならもっと楽しい自慢や嬉しかった事の紹介をしたいと思う。が、しかし、震えるほどの寒さを前にすれば、そんな幻想じみたものは全て寒風に吹き飛ばされてしまう。

 だって、さみいもん。嫌だもん。僕はもっと、夏のあの頃みたいに、家の中を裸でぶらついたり、出かけるタイミングになればその上からテキトーなTシャツを一枚着て下着もテキトー、スキニーパンツをボクサーパンツの上から重ねて、靴なんてTシャツとちょっとでも色が合っていればそれで完璧、みたいな生活をしたいよ。そのまま外にうだうだ出て、首筋をつたう汗を気にしながら歩く。その辺の自販機で、いかにも身体に悪そうな緑色のジュースを買う。(メロンの味なんてしないよ)と不満に思うフリをして、強い炭酸で満足に喉を鳴らす。懐かしさすらある。オーストラリアに行ってしまった友達に連絡でもしてみようかと思う。

 また今日も、黒くて長いコートを羽織り、途中の自販機で人肌よりももう少しあたたかいくらいのカフェラテを買うんだろう。中途半端に曲がった髪に絡まる雪の粒をバサバサと落としながら、夏の頃とは違っただらしない猫背の姿勢で歩くのだろう。寒いの嫌だなあ。