ただひたすら不審な一日。

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 風邪を引いてしまった友達を迎えに行った時の、僕の写真。放ったらかした前髪の重さ、コンビニで買った大きめのマスク、車に雑に転がっていたウエリントンタイプのサングラス。それら全てに僕の大きな顔を覆わせて、完全防備で彼の家へと向かった。昼頃は少し晴れていたから、視界はまだ問題無いくらいのもので良かった。

 彼がのそのそと部屋から出てきて、第一声に『不審者かよ』と言ったのは目に見えていたし、予想は容易なものだ。まあたしかに、真っ黒の格好をした182cmのこんな奴が黄色の車に乗って現れたら、誰もがそう言うだろう。彼も「誰も」のうちの一人だった。さすがにちょっと恥ずかしくなって、彼を乗せた後はすぐにサングラスだけを外して、もういっそこのまま外にぶん投げてしまおうかと思った。しなかったけど。

 

 彼と商業施設に入り、そこのフードコートでくだらない話をしながらちゃんぽんを食べた。彼はニンニクの香りが強いナポリタンみたいなのを食べていた。『栄養があるものを食べたい』なんて言うから一緒に行ったのに、野菜のほとんど含まれていないパスタを懸命に頬張っている彼を見て、(なんて中途半端な奴なんだ…)との感想を言葉にせず頭に留めておく。彼と一緒に居ると、いつもこういうことがあって楽しい。

 懐かしいコインゲームのコーナーを見て、引き込まれるようにそこへと向かった。釣りのゲームが派手に置いてあって、それを2人で前にしながら、興奮した。ガリガリガリ!とリールを回す彼は紛れも無く風邪引きの姿ではなくて、7歳くらいの無邪気なちっちゃい子だった。あの時の彼は確実に7歳だった。うるせえほど元気な。僕もきっとそういう姿をしていたんだろうと思う。「あー!なんでよ!!なんで釣れねえのよ!!!」と声を合わせ荒らげる僕らは多分、それはそれはひどい格好だっただろう。23歳が汗をかいてまで何をしているんだ、という。

 今週のバイトの件で店長に連絡してみれば、その場で今日のアルバイトの出勤が決まり、僕らは車に乗り込み少し急ぎがちで帰路を走らせた。車内はまたも、卑猥な話やくだらなくてたまにつまらない話でぎゅうぎゅうになる。『ラップバトルしようぜ』と声を掛けてきた彼は最近、「フリースタイルダンジョン」に首ったけだ。

 くだらないことを一緒に楽しめるとか、何も生まないような行動を共にしても面白いとか、そういう人は貴重だ。マスクを2人お揃いで着けているだけでちょっと楽しくなる。年季の入ったドクターマーチンのブーツを見て「おじいちゃんの風呂上がりみたいだな」と言った僕の肩を思いっきりぶっ叩いてくる彼は本当に面白い奴。本当に仲が良くないと、そんなことは言えないよ。せいぜい「いいねー、味が出てて」と愛想笑いをするはずだよ。

 やっぱり今日も良い日だった。どうしようもなく面白くて、ずっと口を開けて笑っていたと思う。楽しい日々を過ごせていて、思い返せば僕の周りはこんな奴ばっかりだ。幸せ自慢ばっかりできている今の自分が、たまらなく好きで尊い。素敵な日々です。