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全部9分丈かよ。

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 何を着ても袖が短い。左手はまだいい。大抵の場合は腕時計のおかげで何とかなるからだ。一方、右手に関しては本当に酷い。ただでさえ多めの腕の毛がばっちり見えてしまう。instagramの加工が唯一の救いであり、直接会った人にはきっと気持ち悪がられていることだろう。そこまでボールドなラインが何本も腕から飛び出ている訳ではないものの、いかんせん数が多い。

 半袖を着られた夏の時期はまだ良かった。かえってたくさんの面積を使って腕の毛が披露されていれば、(ああ、この人はそういう人なんだ)と理解してもらえる。全てが見えているんだから。ただ、この季節のこれはダメだ。少ない面積で露わになることで、袖で隠れている毛を想像させてしまうことになるから。もしかしたらこのまま細い毛がサラサラと生えているのか、またはここから一気にもっさり茂るのか。事実は前者なんだけど、前者、まあそこまで僕の腕に興味を持つ人なんてきっといないんだけど。自意識過剰もここまで来たか、と。

 腕が長いという話を人にすれば、ほとんどが『なんで?いいじゃん長いの』と言う。それは身勝手な言葉だ。長くないからそんなことを言えるのだ。「大は小を兼ねる」なんて絶対嘘だ。遠くの物にも手が届くから?何を言うか。背中の痒い部分にも手が届く?何をとぼけたことを言っているんだ。

 秋になったからシャツを着ようと思い、洋服屋でネルシャツに手を伸ばす。打っていて思ったが、「手を伸ばす」の表現すら嫌いだ。伸びてるしな。もうすでに。うるせえわ。で、手に取ったネルシャツの袖に腕を通す。この時点で大抵のシャツは、至極大きいふるいの目からするりと落ちていく。腕が足りない。ここで購入を諦めてしまう。好きなデザインに出会っても、袖が足りないから止める。

 それでも苦し紛れにサイズ展開を聞いて、Lサイズの在庫を確認してもらい、一枚持ってきてもらう。優しく手に乗せてもらって、これこそは…と意気込みながら袖を通す。Lサイズの袖は許容範囲だ。それからゆっくりと前のボタンを閉めていく。ひとつ、ひとつ。上から順に閉めていき、だんだんと鏡越しに目線を下ろして行って、途中で(やっぱりか…)と絶望する。裾が長い。『オーバーサイズ気味に…』と言う店員の口元は若干ゆるんでいた。だから僕は洋服屋に行くのが怖いのだ。古着屋やネットショッピングに頼ってしまうのだ。

 家族を全員並べて見てみても、きっとここまで腕の長い人は居なかったと思う。そこまでか、と思われるかもしれないが、そこまでなんだ。僕の腕は長いんだ。肘から先が凄く長いんだ。なで肩のせいじゃない。腕そのものが長いんだ。まあ、いいんだけど。別に。

 しゃくに障る、というか、ちょっと悲しいくらいの話を読んだことがある。肘から手首までの長さは、足の大きさとほぼ一緒だそうだ。その話を聞いた僕が、足りないネルシャツの腕を肘までまくっている姿はもはや、客観的に見ればきっと哀愁まみれで周りの空気がブルーになっていたんじゃないかと思えるほどだ。組んで高い位置にあった足の裏に腕を添わせる。全然足りない。ぜんっぜん足りない。そのままの最低な気分でメジャーを取り出し、試しに測ってみた。30.4cmの足がどこにあるというのだ。俺はバスケットボールの選手じゃない。

 

 「僕の腕は長い」の6文字をここまで伸ばしに伸ばし、1350文字。僕の腕よろしくだらだらと長く。自虐もここまでくれば大したもんだ。