腕が長い僕の服はいつもこうだ。

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 ハリウッドランチマーケットのストレッチフライス生地の長袖Tシャツを着た。肌触りが気持ち良くて、どこまでも着やすい一枚だ。(今日くらいの気温でも、きっと着心地のおかげで過ごしやすいだろうな)とぼんやり思っていた矢先に、まさかの雨だ。サイクリングロードを歩いていた人々が一斉に急ぎ始めた。その反面、のんびりととぼけた顔で、傘を持つ右手をまじまじ観察していたら、夏の半袖姿をバカにして友達が言った『お前、腕長いよね』という言葉を思い出した。そうだ。僕の腕は長い。全ての長袖のTシャツが、いちいち9分丈みたいになってしまう。

 そもそも、ストレッチの効いたTシャツは、筋肉のほとんど無い僕にとっては天敵である。腕は細長く、胸に強い筋肉が付いている訳でもない。日々のビールのおかげで出てきたお腹だけがストレッチ素材の恩恵をそれとして受け取る。それはもう、パンッパンである。恥ずかしくて着れたもんじゃない。 

 ただ、小さい古着屋で見つけたこれは違った。サイズが4。一般のブランドで言うところのXL。これなら、妊娠23週5日目みたいなお腹を目立たせることもない。全然伝わらないか。着丈の長いTシャツが好きな自分の嗜好にもフィットする。裾はお尻の3分の1程度が隠れるくらい。絶妙な丈感と、強気に張った僕のエラを目立たせない首元のゆとり。ありがたいもので、一度鏡の前でニコニコしてすぐにレジに持って行った。

 

 ただ、恋は盲目とはよく言ったもので、一目惚れしたそのTシャツの「袖丈」を全く度外視していた。新しい服をすぐに着てしまう僕は、家に帰って興奮しつつ、すぐさま封を開けて袖を通して絶望した。「いや、9分丈?」と独り言を言ったのを今でも覚えている。袖が絶望的に足りない。腕の毛が溢れんばかりにハミ出ている。iPhoneですぐに確認できる時間が、シンプルな黒の腕時計が露わになっている。やってしまった。自分の腕が長いのをすっかり忘れていた。

 今でこそ、素敵な時計を手に入れたから良いものの、普段は全く時計を腕に巻かない自分からすれば、ただの地獄だった。純粋につんつるてんなだけだ。やってしまった。僕は腕が長い。丈感も、首元のゆるさも、完璧だった。あまりに完璧過ぎて、袖丈を全く意識させなかった。まあ、いいんだけどさ。まあいいや。

 

 雨降りに袖丈を気にして歩いていたら、半袖で歩く小学生くらいのちびっ子を見つけた。この時期に半袖か。まあ、今日は暖かかったもんな。半袖でも着ておけば、自分の腕の長さと、そのせいでバリッと表に出てきた「つんつるてん」を気にすることも無かったんだろうな。これからどんどん秋になっていって、その度つんつるてんに決まる自分の袖部分を見て、毎度ため息をつきそうになるのかなぁと思うと、少しだけ憂鬱な気分になった。良い時計をもう一つ買おうと思った。まあ、いいや。