飯をたずねて三千里。

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 焦げ目すら愛おしい、札幌大通公園の焼きとうもろこし。とうきび。北海道ではとうもろこしのことをとうきびと呼ぶ。ただ、言ってしまえばそんなのどうでもいい。とにかく春の味がする。気分もあってか、すごく美味しかった。

 春を感じる。目で、鼻で、口で。鮮やかな黄色・黒の色合いが、ふわっと香る醤油の甘辛く香ばしい香りが、いちいち歯に挟まるあの面倒臭さが。その全てが僕たちに春を知らせてくれる。いいなぁ、こういう感じ。春だなぁ。

 偶然写ってしまったおばあさんが、広めのブリムのハットを選んだのにも、完全同意でうなづける。陽の光がやけに強い日の昼過ぎだからこそ。そんなことを考えていなくても、そうとして捉えたいと思ってしまうほどの照り具合。普段ならうっとうしいと思いそうな、噴水から跳ねる水すら心地良い。

 

 最初はお蕎麦を食べるつもりだった僕。歩く道すがら、右を見ても左を見てもどこもかしこもお蕎麦屋さん。そうなればもう、無性に食べたくもなるもので。ただ、そこで僕の友達がずっと言っていた『サンドイッチ食べたかったんだよなぁ』という言葉を思い出す。嫌そうな友達の猫背に気づく。

 そのせいもあって、途中でサンドイッチに浮気せざるを得ず、地下にある有名店「さえら」に行ってみた。大好きなTwitterの友達がオススメしていて、それからずっと興味があったお店。さえら - 大通/喫茶店 [食べログ]

 

 地下鉄の19番出口を探して歩く。歩く。歩く。やっと着いたかと思えば、お店の外の階段まで続くひたすら長い行列。気が狂ってしまいそうだった。逃げるように地上に出た。

 「もう何でもいいね」が何度も互いの口から出てきたくらいに、僕らは大通公園のベンチに座り、隣にあった古臭い屋台を見た。「とうきび」と書かれていて、それはもう即決だった。

 

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 思いのほか美味しかった。思いのほか、と言うにはもったいないほど美味しかった。最初からこうしていれば良かったなんていう無粋な事を言ってはいけない。

 美味しいものは、少しばかり苦労してこそ手に入れるべきだと思う。手に入れるというか、胃に入れるというか。歩けば歩くほど腹が減り、セレンディピティを言い訳に最初の目的や目当てを捨てに捨て。まるっきりネガティブなプロセスをたどって、結果ポジティブならいいだろ、という当て付け。「終わりよければすべてよし」なんていう言葉にしがみついては決して離さなかった。それも全部こじつけで、全部当て付けだ。困ったもんだ。危ない橋がいくつあるのか。

 友達が度々口にした『休日感ある散歩できたわ』という言葉に、僕がいつも思っている「ポジティブなこじつけ」を感じた。ヘットヘトなのに。途中、彼が何本タバコを吸ったかなんてもう覚えていないけれど、相当な数だったような気がする。強く言えば「無駄な時間」だったこの散歩も、こういう人となら何でも面白く感じてしまう。あー、とうきび美味しかった。春をひしひし感じた3時間とちょっとだった。